高血圧は日本人に一番なじみのある慢性の病気ですが,薬は飲み始めたら止められないので嫌だという人が多くいます。これは,ずっと薬を飲むのは面倒,副作用が心配,費用がかかる,特に体調が悪くないので必要ない,今まで元気だったのに病気を認めたくないなど,色々な理由があるでしょう。実際問題として,薬を飲むのは,血圧が上がりすぎて具合が悪くなるぎりぎりまで待っても良いのでしょうか。

結論から言うと,薬が必要な場合は,なるべく早く飲み始めたほうがよく,最近,これを裏付けるような論文が出ました(Hypertension. 2010; 56: 1060-1068.)。これは,まず2つのグループを作り,片方には降圧薬を,他方には偽薬(血圧を下げる作用はないもの)を一定期間飲んでもらいます。途中からは両グループとも降圧薬に変更します。すると,初めのうちは,当然,降圧薬を飲んだほうが死亡率が少なくなりましたが,薬を変更後もその状態が続きました。動脈硬化,左室肥大などは高血圧によって徐々に進行し,降圧治療で予防,改善できますが,途中から治療を始めたグループでは初めから降圧薬を飲んだグループに追いつくほどには改善しなかったということでしょう。つまり,薬はなるべく早く飲み始めたほうがよいということになりました。

次に,薬は飲み続けないといけないかということについては,どうでしょう。高血圧の原因には,肥満,塩分の摂りすぎ,喫煙,飲酒,ストレス,寝不足,家族歴などがありますが,これらの中で,生活習慣が原因になっているものについては,原因を解消すれば薬が要らなくなる可能性があります。

高血圧と診断され,薬が必要と判断されたら,なるべく早く内服を開始し,それと同時に生活習慣を見直すのがベストです。

血圧を下げるという宣伝文句のサプリメントや健康食品を高価な代金で購入するよりは,薬を飲んだ方がはるかに確実な効果が期待できるという訳です。

平井クリニック