チャンピックスによる意識障害
禁煙補助薬「チャンピックス(バレニクリン)」の使用上の注意が改定されました。平成22年10月のタバコ税値上げ後,禁煙治療希望者が急増し,副作用の報告例が集まり,その中に,「意識障害」が含まれていました。このため,今回,注意喚起がなされることになりました。
報告の内容としては,チャンピックスを服用開始8日目に,1回1mg,1日2回に増量したところ,朝の服用約20分後,車の運転中によだれを垂らし,全身が震え,意識がなくなり,気がついた時には道路の側溝に車が突っ込んだ状態になっており,夕の服用後も同様な症状が出現したとのことです。チャンピックス中止後は,同症状は出ていません。
以上の事例から,使用上の注意が,従来「危険を伴う機械を操作する際には注意させること。」となっていましたが,「危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」に改定されました。つまり,チャンピックス服用中は,車の運転など,意識がなくなった時に重大な危険を起こす可能性のあることはしてはいけないということになりました。
チャンピックスの服用期間は12週間で,この間,車の運転をしてはいけないということは,多くの禁煙治療希望者でチャンピックスは使用できない可能性があります。禁煙治療が広がった背景には,値上げの他に,禁煙成功率が従来のニコチンパッチやニコチンガムより向上したことも考えられ,治療にはかなりの痛手です。実際,服用開始1週間で,自然とタバコが欲しくなくなったという方も多いのです。
今後の方針としては,現在,チャンピックスで治療を行っている方は,意識障害の副作用は比較的早い時期に出現していることから注意して服用を継続し,新規の方は,危険な機械の操作を止められない方はニコチンパッチでの治療ということになろうかと思います。
危険性を患者さんに説明し,十分納得して希望される場合には使用可とも考えましたが,突発的な意識障害を起こす「てんかん」の自動車運転と同じく,服用の可否は医師が判断する必要があるかと思われます。
意志の力だけで禁煙できないのはニコチン依存症という病気だからであって,その有効な治療薬が使いづらくなったのは残念なことです。