まず,一体,血圧とは何か,ご説明しましょう。血液は、全身に酸素や栄養分を運び、二酸化炭素や老廃物などを回収してきます。この血液の循環をコントロールしているのが心臓です。

心臓は血液を送るポンプの役目をしていますが,心臓から押し出された血液が血管の壁を押す力、それが血圧です。1分間の脈拍数が60とすると,1時間で3600回,1日では86400回,心臓は縮んだり(収縮)ふくらんだり(拡張)して血液を送り出しています。つまり,1日で約10万回もの血圧が存在するいうことです。

この血圧ですが,長期的には年齢とともに上がってくる傾向がありますが,1日のうちでも,緊張したり寝不足だったり,寒いところに急に出たりすると上昇し,お酒や入浴で血管が広がると下がります。その度合いは血管が硬くなる,言い換えれば動脈硬化が進むと大きくなりますが,通常は本人の体調に異変をきたさないように調節されており,血圧の上がり下がりを自覚することはありません。とは言っても,血圧値は測った時の状況によって変動するものなので,1日に約10万回もの血圧値をどの時点でどのように測るのがよいか,つまり,脳卒中や狭心症,心筋梗塞などの動脈硬化で起こる病気の危険性を予測するのに適切な測定法は何か,問題となります。

従来,診察室で測った血圧値で高血圧の治療がなされてきました。確かに診察室でキチン測れば大方は問題ないのでしょうが,”高血圧治療ガイドライン2009″にある診察室血圧測定法を抜粋すると,測定時の条件として,背もたれつきの椅子に足を組まずに座って数分の安静後,会話をかわさない,測定法として,1-2分の間隔をあけて少なくとも2回測定とあります。つまり,血圧測定に最低10分はかかり,その間は話も診察もできません。おそらく大学病院のような研究機関でもこのような時間のかかる測定をしているところは少ないでしょう。また,1日でも約10万回ある血圧値ですが,1-2ヶ月に1度の診察(この間の血圧値は300万-600万回)で,はたしてどのくらいの精度が得られるのでしょうか。

以上のことから,最近は家庭での血圧測定を積極的にすすめるようになってきました。家庭血圧の測定法は,朝と夜の1日2回で,朝は起床直後で食事や薬の前,夜は就寝前で,椅子に座って1-2分の安静後に測ります。病院やクリニックにいる時間より家庭にいる時間のほうが長いので,どちらが普段の状態を反映しているかは明らかです。

血圧計も家電量販店では3000円程度から手に入ります。高血圧治療中の方,血圧の気になる方は,ご自分で家庭血圧を測られることをお勧めします。

平井クリニック