子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)の供給不足が解消され,公費助成対象者への初回接種が再開されました。専門外ですが,子宮頸がんについて,少し勉強したことを書きたいと思います。

子宮頸がんが他のがんと大きく異なる点として,
1. ワクチンで予防できる
2. 前がん状態での早期発見が可能
の2点が挙げられます。

子宮頸がんの成因として,発癌性のヒトパピローマウィルス(HPV)の持続感染が深く関与していることがわかってきました。ワクチンはこのHPVに対する抵抗力をつけることで感染を防ぎ,子宮頸がんを予防する効果があります。ただし,いったん感染してしまったHPVを排除することはできませんので,感染機会(性交)のないうちに接種するのが効果的です。ワクチンに含まれていない型の発がん性HPVによる感染を考慮すると,予防効果は70~80%と言われています。

2番目の早期発見ですが,特有の自覚症状がないだけに,まずは検診を受けることが重要です。日本では,子宮頸がんは50歳以上の中高年では減っているのに対し,20~30歳代の若い女性で増えています。原因として,若い年代の検診の受診率が低いことが考えられています。

検診は,子宮頸部の細胞を採取して顕微鏡で見る細胞診で行いますが,この検査の特徴として,がん細胞を判定するのは正確だが,前がん病変の検出感度は75%程度と低いことが挙げられます。

最近,新しい検査法として,発癌性のヒトパピローマウィルス(HPV)の感染の有無を判定する,HPV DNA検査が開発されました。この検査と細胞診を併用すると,検診の感度がほぼ100%になるそうです。つまり,両検査とも陰性であれば,がんはまずないということで,欧州での研究によると,この場合は検診間隔を6年に延ばしても安全であったとのことです。両検査とも陰性の時は,少なくとも,毎年は検診を受けなくてよく,自治体の財政面での負担も軽くなることが期待されます。

さらに,前がん病変で見つかると,治療は円錐切除といって子宮は残すことができ,その後の自然妊娠,分娩が可能になります。妊婦の平均年齢が上昇していることを考えると,子宮が残せるかどうかは非常に大きなポイントになります。

HPV DNA検査は,自分で検体を採取できますので,若い年代の受診率を上げることにも有効と思われます。ただし,子宮頸がんの内,HPV DNA検査が陰性のものが3%程度あるとのことですので,細胞診も受けるように啓発する必要があります。

若い年代への子宮頸がん検診の敷居を低くするには,まず,HPV DNA検査を行うのがよいのではないかと思います。

平井クリニック